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2008年11月25日 (火)

世界史英雄列伝その12 「 ナセル アラブの盟主 」

◇ナセル 1918~1970(大統領1954~1970)

1918年 アレキサンドリアの郵便局長の息子として生まれる。
1938年 士官学校卒業後、同志と共に改革を目指す「自由将校団」を結成。
1948年 イスラエル独立に介入し第1次中東戦争勃発。ナセルも参戦。
    敗北し、エジプトでは革新運動激化。
1950年 改革派のワフド党政権をとる。スエズ運河地帯から英軍の撤兵を要求。
1952年 自由将校団、軍事クーデターを起こす。
1953年 革命評議会、王政を廃止しナギブ将軍首班とする指導体制確立、のち大統領に就任。
1954年 ナセル、ナギブ派のムスリム同胞団と対立。暗殺未遂事件起こる。
    ナセル、ナギブ大統領を解任し自ら大統領になる。
1956年 スエズ運河国有化宣言。それに反発した英仏、イスラエルを支援し第2次中東戦争起こる。
    米・ソが介入、ナセルは承認を勝ち取る。
1958年 シリアとアラブ連合結成。(3年後に崩壊)
1967年 戦争準備していたエジプト・シリアに対しイスラエルが先制奇襲攻撃。第3次中東戦争始まる。
    6日間で決着し、エジプトはシナイ半島を喪失。
    ナセル、敗北の責任をとって辞任を宣言。国民が反対し留任する。
1970年 心臓発作で死去。盟友サダトが次期大統領に就任。


 紀元前以来、エジプトは外国の勢力に支配され続けました。オスマントルコから独立後も、スエズ運河という重要な戦略拠点を持っていたため、大英帝国の植民地として苦難の歴史を歩んできたのです。

 ナセルは、そんな自国の様子に憤慨し同志達と自由将校団を結成し改革を誓います。
 第2次大戦後、形だけは独立国家でしたが、スエズ運河地帯には英軍が駐留し続けました。1950年エジプト国民の革新運動の中から政権をとったワフド党はスエズ運河地帯から英軍の撤退を要求します。しかし英国が権利を手放すはずがありません。
 力による改革を痛感したナセルは、1952年クーデターを起こし政権を奪取します。首班にはナギブ将軍を据えましたが、実質的指導者はナセルでした。1953年、王政を廃止するとナギブは大統領に就任しました。

 しかしナギブ大統領を支持するムスリム同胞団は、しだいにナセルの存在が疎ましくなります。そしてナセル暗殺未遂事件を起こします。
 ナセルは、直ちにナギブを解任しナギブ派を政権から追放しました。自ら大統領に就任したナセルは念願の改革にはしります。アラブ社会主義と呼ばれる改革の目的は、階級闘争をやめ国民の団結を図るものでした。

 そして、1956年有名なスエズ運河国有化宣言をします。中東に利権を持つ英仏はこれに反発、イスラエルを支援し第2次中東戦争を起こします。英仏は空挺部隊を派遣し実力でスエズ運河を奪取しようとしました。戦争はエジプト劣勢、敗北も時間の問題となりました。しかし米ソがこれに介入してきます。両国は珍しく共同歩調をとり英仏を非難しました。これ以上戦争を続けると軍事介入も有りうるというという恫喝に英仏は屈します。
 国際政治のなかで米ソが指導体制をとるという強い意志の表れでした。かって列強として植民地大国だった英仏の凋落ははっきり見えてきました。

 ナセルは、微妙な国際政治のバランスに救われる形でしたが、なんとかその承認を勝ち取りました。2回の中東戦争によってイスラエルとアラブは不倶戴天の敵となっていました。1967年、ナセルはシリアと組んでイスラエルを倒そうと戦争の準備を始めます。しかしそれを察知したイスラエルは、逆に先制奇襲攻撃をかけてきました。第3次中東戦争、6日間戦争の勃発です。

 最初の航空機による奇襲で制空権をうばわれたアラブ側は、地上でも精強なイスラエルの機甲部隊に大敗します。この戦争によってエジプトはシナイ半島を奪われるという屈辱の末、敗北しました。
 責任を感じたナセルは辞任宣言をします。しかしエジプトの国民はそれを許しませんでした。戦争に負けたとはいえ、エジプトをアラブの盟主としてここまで築き上げたナセルの力をまだ必要としていたのです。

 1970年、ナセルは心臓発作で亡くなります。あとを継いだのは盟友サダトでした。この国民的英雄の死は民衆に惜しまれました。エジプトの歴史以来ここまで慕われた指導者はいなかったかも知れません。

 紀元前、アッシリアの征服以来、常に外国勢力に支配され続けたエジプトを独立させ、自分たちによる国づくりを実現させたナセル、やはり不世出の英雄だったといえるでしょう。

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