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2013年3月 3日 (日)

アーンドラ朝   古代インドの海洋帝国

 最初にインドの地勢を記します。「世界の歴史6 古代インド」(佐藤圭四郎著 河出文庫)によるとデカン(ダッカン)とはサンスクリット語で南の国を意味する『ダクシナパタ』の訛ったものだそうです。
 
 北インドへ侵入した遊牧騎馬民族アーリア人にとって入ることが難しい密林、大山脈を抱えた高原地帯、それがデカンでした。そこに住む住民は文化の進んだ自分たちとは異質の遅れた民族であり、デカンには侮蔑の意味を込めていたともいいます。
 
 
 しかし、アーリア人が蔑んだドラヴィダ人は本当に遅れた民族だったのでしょうか?実は人類最古の文明の一つインダス文明の担い手はドラヴィダ人ではなかったかといわれています。インダスの遺跡で発見されたインダス文字がドラヴィダ語族の言語の可能性が高いという研究結果があるのです。
 
 むしろ高い文明を築いていたドラヴィダ人たちを滅ぼし未開のインド亜大陸南部に追いやったのは、中央アジアからやってきた蛮族アーリア人だったのではないでしょうか。
 
 
 現在ドラヴィダ人は、南インドタミル・ナードゥ州ケーララ州アーンドラ・プラデーシュ州カルナータカ州を中心に居住し、マレーシア、マダガスカルなど海外にも広がっています。
 
 
 ドラヴィダ人の代表といえばタミル語を話すタミル人でしょう。そのほかマラヤナム語、テルグ語、カナラ語などがドラヴィダ系言語に分類されています。アーリア人が印欧語族のほりの深い白人系なら、ドラヴィダ人は古モンゴロイドです。
 
 
 ドラヴィダ系諸族のうち、歴史に最初に現れるのはアーンドラ族でした。彼らの築いた王朝は一般にアーンドラ朝と呼ばれますが、王家の名前を取ってサータヴァーハナ朝とも呼ばれます。
 
 
 アーンドラとは現在のテルグ族のことです。現在もインドの東海岸ゴターヴァリー、クリシュナー両河の河口に近い中間地帯に居住しています。
 
 
 ただアーンドラ朝の発祥の地がそこなのか、それとも別なところで発祥し最終的にこの地に落ち着いたかは謎です。
 
 
 アーンドラ朝最初の王はシムカだと伝えられますが、歴史を記すことに熱心でないインド人の事ですから何とも言えません。ではなぜアーンドラ朝の名が世界史上残ったかというとローマ帝国の記録に出ているからです。
 
 
 実はアーンドラ人は海洋民族でした。遠くローマやエジプト、東南アジアと広く貿易し南インドでローマ帝国時代の金貨が大量に発見されています。
 
 
 アーンドラ朝はいつ始まったかもはっきり分かりませんが(一説ではBC230年)、マウリア朝(BC317年~BC180年)の頃には存在していたとされます。そればかりか歩兵十万、騎兵二千、戦象千頭を集める事の出来る堂々たる大国でした。
 
 マウリア朝もこれを完全に征服する事は出来ず緩やかな従属関係しか結べませんでした。マウリア朝が衰えると独立を回復し一時はマウリア朝の首都パータリプトラを脅かすほどだったそうです。
 
 
 アーンドラ朝が最盛期を迎えるのは1世紀の終わりから2世紀にかけてのガウタミープトラ・シリー・シャータカルニ王の時代です。インド西北部に侵入してきたスキタイ系サカ族の勢力を北方に押し返し、グジャラート、マールワなど北部インドの一部も領有しました。だいたい120年頃だといわれます。
 
 
 しかしシャータカルニ王が死ぬと王朝は衰退期に入りました。西北インドへクシャーナ朝が侵入して来ると、クシャーナ朝に降伏しその尖兵となったサカ族のために北部インドの領土を奪われ、その戦争で疲弊し194年頃には分裂し崩壊の道を歩み始めます。
 
 
 滅亡の時期を220年頃という説がありますが、これはアーンドラ朝の正統が失われたという事でしょう。分裂したいくつかの小国はその後も残ったようです。そして完全に滅びたのは6世紀の末ヒンドゥー教を国教とするチャールクヤ朝が中部インドを統一した時です。
 
 
 北インドを統一したクシャーナ朝、グプタ朝がなかなか南部に勢力を広げられなかったのはアーンドラ朝に代表されるドラヴィダ人の勢力が強力だったからでしょう。海洋交易民族でもある彼らを完全に征服するには、騎兵が主力の遊牧民族や歩兵主体の農耕民族の国家では難しかったのだと思います。

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