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2013年3月 3日 (日)

世界史英雄列伝(41) 『ハルシャ・ヴァルダナ』 古代インド最後の帝王

 西暦633年、西遊記で有名な唐の高僧玄奘三蔵は長い旅の末あこがれの天笠(インド)へ到達します。時のインド王戒日王は、玄奘を温かく迎えこれを保護しました。
 
 玄奘はナーランダ大学で戒賢に唯識を学びインド各地の仏教遺跡を巡ります。時には戒日王に進講もしたそうです。657部にも及ぶ貴重な仏典を携え帰国した玄奘は出国から16年の歳月を費やし唐に戻りました。
 
 玄奘の持ち帰った仏典は、後の仏教発展に大きな貢献をします。
 
 
 
 玄奘を保護し仏教に深い理解を示した開明君主戒日王こそすなわち本稿の主人公ハルシャ・ヴァルダナです。
 
 
 
 実は、玄奘は絶妙な時期にインドを訪れました。というのもそれまでの統一王朝グプタ朝が550年に滅亡し、インドは大混乱に陥っていました。そんな中、一代の英傑ハルシャ・ヴァルダナがガンジス中流域に興り北インドを統一した時期だったのです。彼の起こしたヴァルダナ朝は、英傑の死と共に急速に没落し再び戦国時代に突入します。
 
 そしてイスラム勢力が西北インドに侵入し、13世紀にはデリーを中心として北インドを支配する所謂デリースルタン朝の時代に入るのです。
 
 
 ハルシャ・ヴァルダナ(590年~647年、在位606年~647年)は、ガンジス、ジャマナ-両河の間にある聖地クルクシュートラにあった小国ヴァルダナ(ターネサル)王国の王子として生を受けます。彼の一生は決して順風満帆ではなく、父王プラバーカラの後を継いだ兄ラージャ・ヴァルダナがベンガル王シャシャーンカの姦計によって殺されるという悲劇を受けてわずか16歳で即位するところから始まりました。
 
 彼は混乱する王国を纏め、義弟の死で空位になったマウカリ朝を併合しガンジス河上流域に確固たる地位を築きます。ハルシャ王はマウカリ朝の首都であったカナウジ(曲女城)を新生王国の首都と定め王国の基礎を固めると各地に攻伐の軍を進め6年という短い期間で東はアッサムから西はカーティアワールに至る北部インド全域を平定しました。
 
 ただハルシャ王の常勝軍(『世界の歴史6 古代インド』における表現)も、デカン進出には失敗します。インド中部に勢力を張っていたチャールクヤ朝のプラケシン2世に敗れナルバター川以南へは進出できませんでした。さらにラージプターナ、シンド、パンジャーブもフーナ族(エフタルのインド呼称)、グルジャラ族(エフタルとは同系統とも別系統とも言われる異民族)に占領されたままで回復できませんでした。
 
 
 ハルシャ王は、武人であるばかりでなく文化にも高い関心を持った開明君主でした。みずからは仏教を信仰しヒンドゥー教などの諸宗教を保護します。政治に関しては重要事項は自らが決済し雨季以外は絶えず国内を巡視し治安の維持に努めたとされます。早馬の制度を整えたり関所や渡船場をまとめ商人を保護しました。
 
 5年ごとに首都カナウジに主だった各宗教の代表を集め宗教会議も開きます。北インドはそれまでと比べると比較的安定した時期だったと思います。ですから冒頭で書いた通り玄奘三蔵はとても良い時期にインドを訪れたのです。
 
 またハルシャ王は文学を愛し、自ら劇を書くほどの入れ込みようでした。ハルシャ王の宮廷には多くの文人が出入りしこの時代文化の花が咲きました。ハルシャ王の伝記である有名な「ハルシャチャリタ」もこの時代に書かれたものです。
 
 
 しかし、ハルシャ王は647年後継者を定めないまま57歳で死去します。ハルシャ王の時代戦象6万、騎兵10万にも及ぶ強力な軍隊を擁した大国も、こうして急速に瓦解しました。
 
 
 ヴァルダナ朝はハルシャ・ヴァルダナが一代で築いた国だったといえます。英傑の死と共に広大な領土を支えきれなくなり多くの小国に分裂しました。そして長い混乱の末最後はカイバー峠を越えて西北インドに侵入してきたイスラム勢力によって滅ぼされるのです。
 
 
 ハルシャ王の死は、インドにおける仏教の衰退でもありました。以後仏教はインドの民族宗教であるヒンドゥー教にとって代わられ細々と続くのみになります。しかし玄奘三蔵が持ち帰った仏典によって支那、さらには日本に新たなる仏教の息吹が伝えられこれらの地域で独自の発展をしていきます。

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