アルミニウムとジュラルミン
コモンメタル(普遍の金属、一般の金属)といえば、鉄・銅・亜鉛・金・銀・水銀・錫・鉛などとともにアルミニウムがあげられます。
アルミニウムは近代産業にかかせない金属の一つですが、自然界にはアルミニウム単体ではほとんど存在しません。一般的にはボーキサイト(鉄礬土【てつばんど】)を水酸化ナトリウムで処理しアルミナ(酸化アルミニウム)を取りだした後、それを氷晶石(ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム、Na3AlF6)とともに溶融して電気分解して生成します。ちなみになんで氷晶石を一緒に入れるかというと、アルミナ単体では融点が高い(2000℃)からだそうです。氷晶石を混ぜると融点降下を促し1000℃で溶融塩電解できるのだとか。
ですから大量の電気が必要で、だいたいアルミニウム1トンを取りだすのにボーキサイト4トンと13000~14000kWhの電力が必要だそうです。まさに近代工業力の結晶ともいうべき金属です。
アルミニウムは、軽量で加工しやすいことから多くの工業製品に利用されますが、そのほとんどは合金の形で使われます。というのはアルミニウム単体では強度が足りないのです。
一番有名なアルミニウム合金がジュラルミンです。ジュラルミンはアルミに銅4%、マグネシウム0.5%、マンガン0.5%を混ぜて作られます。ジュラルミンは1910年代ドイツのツェッぺリン飛行船やユンカース飛行機の航空機用資材として初めて導入されました。
しかし腐食性や強度に不満があり第2次大戦頃の主要航空機には超ジュラルミンが使用されます。これはアルミに銅4.5%、マグネシウム1.5%を混ぜた合金です。現在でも飛行機の機体にはこれが用いられます。
ところで超ジュラルミンを超える強度を持つ超々ジュラルミンという合金があります。実はこれ日本で作られたものです。アメリカ製軍用機に使用されている超ジュラルミンを見てもっと硬い合金を作ろうとして開発されました。
1936年、海軍航空廠の要請により住友金属が開発します。超々ジュラルミンは亜鉛5.5%、マグネシウム2.5%、銅1.6%を混ぜた合金です。
有名な零式艦上戦闘機の設計者堀越二郎は、軽量化と強度という二律背反する性能を高いレベルで調和させるために機体の素材に超々ジュラルミンを採用します。大戦中墜落した零戦をみた米軍兵士は、その硬さに驚いたそうです。(と言っても機銃弾を跳ね返すほどではないので全体的な防御力は弱い)
現在でもアルミ合金は軽量化と強度を求められる様々な工業製品に使われています。
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