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2019年3月 2日 (土)

中東戦争航空戦Ⅰ    6日間戦争

 6日間戦争とは日本で言うところの第3次中東戦争の事です。1967年6月5日から6月10日まで6日間で終わったため欧米では6日間戦争という呼び名が有名です。
 
 第3次中東戦争の航空戦は実質的にフランス製のダッソー ミラージュⅢCJが主役でした。もちろん開戦初頭の航空奇襲でアラブ側の航空機の大半を撃滅していたという事もありましたが、アラブ側の主力戦闘機であるMiG-21と似たようなコンセプト、すなわち軽量小型の機体に大推力エンジンを搭載し運動性重視の軽戦闘機でありながらミラージュのキル・レシオ(自機が1機撃墜される間に相手を撃墜する数)5:1という結果になった理由は何だったのでしょうか?
 
 開戦時、イスラエル空軍は
ミラージュⅢCJ戦闘爆撃機×72機(3個スコードロン)
シュペル・ミステールB-2戦闘爆撃機×18機(1個スコードロン)
ミステールⅣ‐A戦闘爆撃機×50機(2個スコードロン)
ウーラガン戦闘爆撃機×40機(2個スコードロン)
が主な兵力でした。
 
 一方アラブ側は主力のMiG-21だけでもエジプト空軍120機、シリア空軍36機、イラク空軍40機など総勢1000機を超える大兵力を持っていました。
 
 まともに戦ったら数の差で劣勢に陥るのは明らか。ですから戦争開始と同時に航空奇襲で敵基地を叩き戦闘機が発進する前に破壊したのは大正解でした。イスラエル空軍は戦争開始の最初の60時間でアラブ側戦闘機を450機も破壊したそうですから凄まじい。これに対しイスラエル側の損失は45機。それも大半は対空砲火にやられたもので空中戦での被害はわずか4機だけでした。
 
 これで制空権を握ったイスラエル軍は、アラブ軍を一方的に押しまくりシナイ半島全域、ゴラン高原、ヨルダン川西岸など実に国土の4倍とも言える広大な占領地を得ました。
 
 
 ですからミラージューⅢCJとMiG‐21の公平な評価はできないのですが一応機体の性能を比較してみます。
 
 運動性のバロメーターともなる推力重量比はミラージュが0.61に対しMiG-21は0.76とむしろMiGが上回ります。推力重量比は加速力に影響を与えこれが1を超えると垂直上昇できるのです。
 
 また翼面荷重も運動性に影響します。特に旋回性に。これは低いほど運動性が高くなります。ミラージュは295、MiGは218。
 
 
 見てみると両者は運動性ではほぼ互角、というよりわずかにMiG-21の方が勝るとも言えます。
 
 
 とすればこの一方的な勝敗の原因は別のところにあったのでしょう。一つはミラージュの火器管制装置の信頼性の高さ。そしてもう一つの大きな要素としてイスラエル空軍パイロットの技量の高さ。
 
 
 イスラエル空軍の訓練はアメリカ海軍の訓練方法を取り入れ実戦的なものだったそうです。飛行時間も長くおそらく当時(もちろん現在も)世界有数の技量をもっていました。
 
 一方、アラブ側はソ連式の硬直した訓練方法を取り入れ地上のレーダー管制に従った機動しか許されていませんでした。これはベトナム戦争では有効な方法でしたが、技量差の大きいイスラエル空軍パイロットにとっては良いカモでした。
 
 
 エジプト空軍は、自軍の訓練方法に疑問を持ちソ連の軍事顧問団と衝突したほどだったそうです。両者の技量差を示す実例として、イスラエル空軍ではミラージュだけではなくウーラガンやミステールのような旧式機さえMiG-21の撃墜記録を持っていました。
 
 また使用するAAM(空対空ミサイル)の性能差も大きかったと思います。イスラエル軍ではこのころアメリカ製のAIM-9サイドワインダーと自国開発のシャリフを使用していました。一方アラブ側はサイドワインダーのデッドコピーであるR-3(AA-2アトール)。さすがにパクリ品だけに信頼性はサイドワインダーの方が上でした。
 
 イスラエル軍パイロットの報告では、敵機が自機の背後に着き一瞬危ないと思った場面でも、敵機がミサイルを発射せず助かった事が何度もあったそうです。発射の瞬間何らかのトラブルが発生したのでしょう。
 
 
 機体の信頼性、パイロットの技量、ミサイルの性能すべてにおいてイスラエル軍が上回っていた事が6日間戦争(とその後の消耗戦)圧勝の理由でした。
 
 このためアラブ側は戦略の再構築を余儀なくされます。次回はアラブ側の反撃と慢心による油断で苦戦するイスラエル、すなわちヨム・キプール戦争(第4次中東戦争)における航空戦を描きます。

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