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2021年5月14日 (金)

書評『極超音速ミサイルが揺さぶる「恐怖の均衡」』(能勢伸之著 扶桑社新書)

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 近年日本の新たなる脅威としてクローズアップされてきた極超音速ミサイル。その定義はマッハ5を超える速度で弾道ミサイルのような放物線軌道ではなく終末時に不規則に動くミサイルです。大きく極超音速巡航ミサイルと極超音速滑空体に分類されます。発射時は通常のミサイルの通り滑空体なら放物線軌道、巡航ミサイルなら水平低空軌道です。ところが命中前の終末機動時に不規則な動きをします。現状、迎撃が非常に困難で日本のイージスアショア計画が頓挫したのも極超音速ミサイルが原因だとも言われています。

 滑空体と言ってもどのようなものか想像できない方も居ると思いますので簡単に説明すると、扁平の三角型弾体でその形状自体が揚力を発生させるため推進力がなくなった最終段階でも簡単な制御で不規則な動きが可能です。現在のミサイル防衛は放物線軌道を描く弾道弾か巡航ミサイルなら亜音速で捕捉しやすいものに限定されています。日本にもしシナやロシア、あるいはすでに北朝鮮も保有していると言われますが、極超音速ミサイルを撃たれると直撃は免れません。

 報道ではロシアやシナが極超音速ミサイルを実戦配備しているのに比べ、アメリカはまだ実験段階だと言われています。高い技術を持つはずのアメリカがまだ開発できていない理由は何かと疑問に思っていたんですが、本書を読んで氷解しました。すなわち、ロシアやシナは弾頭に核搭載を前提にしているのです。ですから核の加害半径内に落とせば済むので実戦配備が出来たのだそうです。一方、アメリカは核搭載を前提にせずピンポイントの精密な誘導を目指しているため開発が困難だと言われます。日本も極超音速ミサイルを開発していると言われますが、アメリカなどと協力し一刻も早く実戦配備してほしいですね。

 本書は技術的な面でも非常に参考になりました。大気中をマッハ1以上で飛行する物体は空中に衝撃波を発生させます。衝撃波が強ければ空気が圧縮加熱され飛翔体周囲の空気が電離しイオン化してプラズマになります。プラズマが飛翔体を包み込むと外部からの電波を遮断し通信途絶(ブラックアウト)するそうです。当然GPS信号も受信できず、外から電波で制御することも困難になります。ですから極超音速ミサイルは終末時の不規則機動をあらかじめプログラムしておくか、弾体内部に自律的に動くコンピューターなどの制御装置が必要です。制御装置は高温に耐えられなくてはならず、プラズマの膜を通してでも外の情報を取得できなければなりません。それがどれだけ困難か、素人の私でも想像できます。

 ですからシナが主張する極超音速の対艦ミサイルなど嘘っぱちだと分かります。数十ノットで動く艦船にあたるはずがない。核搭載なら加害範囲が広いので大体そのあたりに撃ち込めばよいのでしょうが、もしアメリカの空母打撃群を核攻撃したとなると全面核戦争を覚悟しなければなりません。ということで我々が警戒しなればならないのは固定目標だと思います。在日米軍基地、自衛隊基地は言うに及ばず有事になったら原発や都市の中心部も危ない。しかも命中精度に疑問があるからその周囲にも被害が及びます。

 日米が開発中の極超音速ミサイルはプラズマが発生しないぎりぎりの速度を目指すか、プラズマ発生時の制御を目指すかしかありません。ただ完成したら、ロシアやシナも迎撃は困難ですから有利になると思います。

 私は技術に疎いので頓珍漢な事を言っているかもしれませんが、核弾道ミサイル、巡航ミサイルと並ぶ新たな脅威としてわれわれ日本人も極超音速ミサイルを認識すべきだと考えます。

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